私の思い~きっかけとタイミング~
「別に何もないですよ。」
綾子さんにはそう答えたが…。
こないだ社内で顔を合わせた時に、連絡先を教えてほしいと言われた。
私はその時は何とか曖昧にやり過ごした。
でもさすがにトップセールスマン。
今度はうっかりしていると、上手な話術で丸め込まれるかもしれない。
別に井上さんが嫌いなわけではない。
仕事も出来て、良い人だとは思う。
でも何だか距離を感じてしまう。
何故か私はモテる人が苦手なのだ。
そういう場面に何度か出くわして、私の井上さんに対する心証は良くない。
ひとつしか歳が変わらない井上さんと綾子さんは仲が良い。
だから彼氏がいない私に、綾子さんは井上さんをしきりと勧めてくる。
でもいくら綾子さんのお勧めでも、こういう事は妥協できない。
「井上さんはモテますからね。そんな人と私では釣り合いません。」