私の思い~きっかけとタイミング~

恵太の表情は変わらない。

すると綾子さんはいつものようにふわりと笑って、津田さんに近寄った。

「あなたにもきっとその時が来たら、ちゃんと現れるわよ。あなただけを見てくれる人が。…それが恵太君じゃなかっただけよ。」

綾子さんの家で、綾子さんが結子ちゃんに言った言葉。

それは少しの言葉が付け加わって、大人である津田さんへの言葉になっていた。

津田さんは綾子さんを見つめた。

「恋って…、人の縁って、そういうものなんだよ。」

一登さんは綾子さんの言葉に付け加えた。

そしてぐっと綾子さんを引き寄せる。

自分には綾子さんがその相手だと、津田さんに見せつけるように。

本当にぶれない夫婦だ。

その杉浦夫婦の仲の良さに圧倒されたんだろうか。

津田さんは何度かこっくりこっくりと頷いた。

「そうですよね。あなた達より素敵な彼を見つけます。私ならもっと条件のいい人が見つかりますよね。」
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