私の思い~きっかけとタイミング~
「あれ?杉浦は?」
井上さんは私のデスクの前の席を見た。
「綾子さんは娘さんの体調が悪いので、定時で退社しました。」
私は早口でそう言った。
綾子さんに用事なら明日しか話せないのだから、早く自分のデスクに戻ればいいのに。
「そう。じゃあ、代わりに新田さんにお願いしようかな。」
そう言って井上さんは出張の交通費の領収書を差し出した。
そう、これはれっきとした総務のお仕事。
私は領収書を受け取ると、計算機で数枚の領収書の合計金額の確認をした。
「では、5,360円ですね。」
私は自分の手のひらに置いた五千円札とさらにその上に置いた小銭をひとつひとつ井上さんの目の前で確認した。
「では、確かに。」
井上さんはお金を私から受け取ろうとする。
チャリーン。