私の思い~きっかけとタイミング~
「そう言えば恵太は結婚しないのか?」
先生は矛先を変えてくる。
「親父さんは孫が抱きたいと言っていたぞ。」
そんな風にからかう様子の先生に、俺はわざと大きな溜息をついてみせた。
「親父の為に結婚するんじゃないですからね。俺は自分で相手を見極めたいですね。」
そう言って苦笑いをする。
「そんな所さっき話していた美紗ちゃんと似ているな。」
先生の話に俺はドキッとする。
実は昨晩から、彼女の椅子に座ったままの寝顔が頭の中から離れないのだ。
柱にちょこんと頭をつけ、少し微笑んだような寝顔だった。
確かにその姿を見た時、可愛いと思った。
だから逆にその後の検査は淡々と進めたんだ。
そうしないとこっちのペースが乱されそうだったから。