私の思い~きっかけとタイミング~
「新田美紗さんって方ですけど、診断して頂いたのは森崎先生ですよね。」
そう言って津田はカルテをひらひらさせながら、俺に渡す。
「そうだ。もうその場で説明したから、これで終了だな。」
そんな事を言いながら、俺は即座にそのカルテを受け取る。
ああ…。
俺は馬鹿だ。
焦らなくても、カルテに患者の連絡先が記入されているんだった…。
あんなに一生懸命、彼女にこちらの連絡先を伝えたのに…。
俺はこれまでの努力を虚しく感じた。
CT技師が直接患者に連絡する事はない。
だから気が付かなかったんだ。
俺は全身から力が抜けた。
「どうしたんですか?さっきの元気はどこに行っちゃったんですか?もしこのカルテが用済みなら、今から総合受付に行くので持っていきましょうか。」
津田は手を差し出している。