斬華
✧
今日の四条通はいつもに増して人が多い。
そう広くない通りは、ごった返す人波で砂埃が舞っている。
コンチキチン、という祭囃子を聞きながら、由之介(ゆのすけ)は足早に路地裏を進んでいた。
すでに宵の口だ。
最近は京の町も物騒である。
毎日のように浪士の斬り合いがあり、下手に時勢を口にすれば胡乱な輩に尾(つ)けられる、といった具合だ。
由之介は一軒の料理屋に入った。
通りからは外れた、小体な料理屋だ。
通された二階の座敷には、昔馴染みの宗助(そうすけ)と五郎(ごろう)が、すでに酒を飲んでいた。
「遅いぞ、由之」
「悪い。どうもこの時分の街中はいかん。祭りの最中やっちゅうのに、胡乱な奴らが目につきよる」
「そうやなぁ。こんなんやったらおちおち祭りも楽しまれへん」
宗助が、ぼやきながら窓辺に身を寄せた。
「ここは目立たんから落ち着ける店やが、こういう時分は返ってヤバいかもな」
「けど俺らは別に、攘夷や佐幕やいう話をしてるんやないで。単に祭りついでの飲み会や」
五郎が由之介に酒を注ぎながら笑う。
そこに女将が顔を出した。
「お久しぶりやな、由之さん。今日は皆で祭り見物ですかいの」
そう広くない通りは、ごった返す人波で砂埃が舞っている。
コンチキチン、という祭囃子を聞きながら、由之介(ゆのすけ)は足早に路地裏を進んでいた。
すでに宵の口だ。
最近は京の町も物騒である。
毎日のように浪士の斬り合いがあり、下手に時勢を口にすれば胡乱な輩に尾(つ)けられる、といった具合だ。
由之介は一軒の料理屋に入った。
通りからは外れた、小体な料理屋だ。
通された二階の座敷には、昔馴染みの宗助(そうすけ)と五郎(ごろう)が、すでに酒を飲んでいた。
「遅いぞ、由之」
「悪い。どうもこの時分の街中はいかん。祭りの最中やっちゅうのに、胡乱な奴らが目につきよる」
「そうやなぁ。こんなんやったらおちおち祭りも楽しまれへん」
宗助が、ぼやきながら窓辺に身を寄せた。
「ここは目立たんから落ち着ける店やが、こういう時分は返ってヤバいかもな」
「けど俺らは別に、攘夷や佐幕やいう話をしてるんやないで。単に祭りついでの飲み会や」
五郎が由之介に酒を注ぎながら笑う。
そこに女将が顔を出した。
「お久しぶりやな、由之さん。今日は皆で祭り見物ですかいの」
< 1 / 15 >