斬華
 再び降って来た刃は、折れた刀の柄で何とか受けた。
 だが敵を倒さない限り、助かる道はない。

 その時、いきなり由之介の目の前に、刀の切っ先が現れた。
 前で刀を合わせていた男の胸を貫通しているのだ。

 男は驚愕に目を見開いたまま、ゆっくりと崩れ落ちた。
 倒れた男の向こうに、前屈みになった五郎が刀を構えて立っている。

「五郎! お前、無事やったんか」

「へ。あれっくらいでやられるかよ……」

 にやりと笑うが、顔は蒼白だ。
 着物もどっぷりと血を吸っている。
 背中の傷は、浅くはないだろう。

「助かったぞ」

 それだけ言い、由之介は手近にあった刀を掴んで立ち上がった。
 すぐに別の方向から、刀を大上段に振り上げて男が斬りかかってくる。

「阿呆が」

 屈みながら、由之介は刀を突き出した。
 このような狭い室内で刀を大きく振り被れば、切っ先はたちまち鴨居につっかえる。

 案の定、上段に振り被った刀は、頭上の鴨居に食い込んだ。
 がら空きになった胴に、由之介の刀が突き刺さる。

「出るぞ!」

 大分人数は減った。
 だが刀も変えたところでぼろぼろだし、何も全員斬り倒すこともないだろう。
 元々別に敵ではないのだ。

 隙を見つけ、由之介は五郎の手を引いた。
 五郎はよろめきながら、由之介についてくる。

 走りながら、ちらりと振り返った由之介は、宗助の額が斬られるのを見た。
 血が、派手に飛ぶ。
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