斬華
「宗さんーー!!」

「やっかましい!!」

 華の泣き声と、宗助の怒鳴り声が響き、キィン、と金属音と火花が散る。
 飛び込んできた三人を、宗助の刀が横殴りに払った。

 二人の胴を裂き、最後の一人の刀に当たって、宗助の刀が折れた。
 華が、また駆け出して来ようとするのを目の端に止め、宗助は折れた刀を捨てると、残った一人に突っ込んだ。

「すっ込んでろ言うとるやろが!」

 言いながら、男の顎に思い切り頭突きを打ち込む。
 一瞬、ぱっと辺りが真っ赤に染まった。
 宗助の額から、さらに噴き出した血と、頭突きで口の中を切った男の血と歯が飛び散る。

 その間に、由之介は真っ向から一人を斬り倒し、五郎を追っていた残り一人を袈裟がけに斬り下ろしていた。

「宗助、大丈夫か」

「ああ……」

 ふらりと、宗助が駆け寄ってきた由之介に寄りかかった。
 そのまま、ずるずると倒れ込む。
 見ると、五郎も入り口近くで倒れていた。

「……とにかく、一旦引き揚げな。まだ息のある奴もおるし、騒ぎを聞きつけて、またややこしい奴らが来たら鬱陶しい」

 とはいうものの、意識がしっかりしているのは由之介だけだ。
 かろうじて宗助はまだ動けるが、五郎はすでに意識がない。

「宗さん……。あたしが」

 華が宗助を助け起こそうとするが、その手を宗助は払った。

「華ちゃんはええよ。女子連れじゃ目立つしの。正吉(しょうきち)借りてええか?」

 由之介の言葉に、きゅ、と唇を噛み締め、華は頷くと、少し後ろにいた料理人見習いの正吉を呼んだ。
 がたいの良い正吉は、軽々と五郎を担ぎ上げる。
 由之介は宗助に肩を貸し、店を後にした。
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