斬華
「ええな。おばちゃん、華ちゃん呼んで来たってや。暇してんのやろ?」

 由之介と宗助に言われ、女将もはいはい、と腰を上げる。
 程なく一人の娘が、膳を持ってやって来た。

「華ちゃん、久しぶりやな」

 笑って手を挙げる由之介の前に膳を置き、華ははにかんだように笑った。

「ちょっと前に宗さんと五郎ちゃんが来たから、いつ顔出そうかと思ってたんよ。でもお母ちゃんが、男の話に簡単に入っていったらあかんて言うから」

「何じゃ、男の話って」

「女子に聞かせられへん話ってことか?」

 にやりと五郎が笑い、華が赤くなる。
 あははは、と笑っていると、階下がにわかに騒がしくなった。
 男の怒鳴り声が聞こえる。

「何や? 喧嘩か?」

 五郎が襖を開け、廊下に出た。
 その途端。

「いたぞ!」

 叫び声がし、階下にいた数人の男たちが、一斉に階段を駆け上がってきた。
 ただ事ではないことに気付き、五郎は慌てて部屋に取って返す。

「な、何か、誤解されとる」

 宗助と由之介、華がきょとんとしていると、すぱん、と五郎の背後の障子が引き開けられた。
 同時に、入って来た男がいきなり刀を振り上げる。
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