斬華
「斬り合いは避けられへん。けどその前に、一つ頼みや。華ちゃんは逃がしたってくれ」

 由之介が、華の肩を押して、出るよう促しながら言った。
 男たちの視線が、一斉に華に向く。

「そうじゃな。女子にゃ罪はないな」

 先頭の男が、少し刀を下げて道を開けた。
 不安そうな顔で由之介らを見た華だが、ここに留まっても邪魔なだけだろう。
 そろそろと、男らの脇を抜けようとした。

 が。

「待て。こやつも仲間じゃないか? 一人だけ女子がいる、というのも怪しい」

 男らのうちの一人が、華の腕を掴んだ。

「それもそうじゃ。女子であれば、いろいろなところに出入りしても疑われん。なるほどな」

「捕えておけ」

「きゃっ!」

 乱暴に腕を拘束され、華が叫び声を上げる。

「華ちゃん!」

 五郎が華を捕まえた男に掴みかかる。
 その五郎目掛けて、白刃が振り下ろされた。

「ぎゃっ!」

 ぱ、と血が飛び、五郎が仰け反った。

「五郎ちゃん!」

「五郎!」

 華と由之介の叫びが重なる。
 その隙に、宗助が手前の男に斬り込んだ。

 敵の眼前まで迫り、抜き付けの一閃で胴を払う。
 男は声も上げないまま、臓物を撒き散らしながら倒れ込んだ。
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