斬華
「おお! こっちだ。ここに二人おる!」

 どうやら加勢に来た者がいるらしい。
 ここは先手必勝、と宗助と目を合わせると、由之介は気を込めて畳を蹴った。
 はっと振り向いた先頭の男の顔面に、突きを打ち込む。

「うらぁ!」

 男の顔を串刺しにしたまま、由之介は思い切り刀に力を込める。
 男のうなじから突き出た切っ先が、そのまま後ろの男の首に刺さる。

 宗助が、倒れ込む男の手から刀を奪って由之介に放った。
 由之介は二人を串刺しにしたままの刀を離し、宗助から受け取った刀を下げて廊下に出た。
 見ると、十数人ほどの侍が抜き身を下げている。

「いかんな。逃げたほうがよくないか」

「そうやな。刀ももたんわ」

 男たちのほうが圧倒的に数が多くなったが、幸いにして狭い京の家の造りに慣れていない。
 間口が狭く奥行きの長い京の町屋は、刀を振り回すには狭すぎるのだ。

 京で育った由之介と宗助は、そのようなことは百も承知だ。
 故に剣術も、振り被ったりしない居合や突きを磨いてきた。

「この刀、なまくらやないやろな」

「そこまで構ってられへんわ。けどこいつら、こういうことは初めてやないやろ。だったらそれなりの業物のはずやで」
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