斬華
 ぼそぼそと喋りながら、宗助は相手との間合いを読む。
 居合は間合いを誤ると致命的だ。
 こちらの攻撃が一撃必殺なだけに、外すと後がない。

「俺は右手の奴らを引き受ける。適当に血路を開いて外に逃れるわ」

 じり、と宗助が、足指で畳を探りながら呟いた。

「そやな。ほんなら俺は後ろの奴らを斬って、窓から外へ出るわ」

 言うなり由之介は反転し、背後に回っていた男に向かって刀を突きだした。
 男の肩先を、刀が掠める。

---外したか---

 突きはあまりに大勢は相手に出来ない。
 相手が縦一列に並んでいてくれれば、先のように二人いっぺんに突き刺せるが、それとて刀を駄目にする。
 そこまで深く突き刺すと、容易に抜けないのだ。

 宗助が、気合と共に敵の塊に突っ込んだ。
 一気に間合いを詰め、敵の間近で抜刀する。

 宗助の居合は尋常な居合ではない。
 相手が避けようもないほどに近付き、刀を振るう。
 ために斬られたほうは、初めの男のように、胴を両断されるほどの深手を負う。

 刀を振る腕の力も相当なものだ。
 かなり敵に近付いて斬るので、複数に囲まれても、囲んだ者らをまとめて斬ることが出来る。

 斬られることを恐れず、そこまで相手の懐に飛び込む度胸がないと出来ない技だ。
 仕損じれば確実に相手の刀が落ちてくる。
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