ぼくとあなた



貴女は末期ガンだった。


僕は知らなかった。


貴女は言った。


私はあなたに迷惑をかけたくない。


だから、あなたの気持ちに応えることはできない。


と。


やめてくれ。


そんなこと言わないで。


貴女の余命が短いなら尚更だ。


死ぬその瞬間まで側にいよう。


そう言うと貴女はずっと堪えていた涙を初めて僕に見せた。


初めて見るその涙はどんな宝石よりも輝いていた。




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