ねぇ、聞いて。



私はこの前ママが持って来てくれたギターを手にとった。



「~♪~♪~♪」


こんな時ほど歌いたくなる。

こんな時なのにメロディーが浮かんでくる。


ガラッ


「~♪……太陽!ゲホッ、ゲホッ!!」


太陽は駆け寄って私の背中をさすってくれた。

「大丈夫、ありがと」

そう言って微笑むと 太陽はいつも通り


「別に。」


と顔をそむけた。


「俺さ、お前が俺と初めて会った時
初めて見たって言ったよな。

俺、前から魅音のこと知ってた。」

え?

私は耳を疑った。


でもいくら考えてもその前に会った覚えはない。


「分かんねぇのが当然なんじゃねぇの?

お前、俺に気づいてなかったし」


「それって…」


太陽は私のギターを見た。


「俺んとこ、親父が理事長でお袋が音楽学校の講師なんだ。

だからお袋にいろいろ聞かされてたよ。


病院に透析に行った後、栄養取るために野菜買いに八百屋に行った。」

懐かしむように話す太陽からひっかかる言葉が出た。

八百屋?


「それって…水野フルーツベジタブル?」








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