Secret Mission
その声が聞こえた直後、木を蹴る音がし、何かが倒れた。
「……っ…だ、誰かいるんですか!?あの、た、たすけてください!」
水樹が声を上げると、渡辺たちの怒ったような声が聞こえてきた。
***
「なんだよ、お前!」
いきなり現れた男に渡辺が声を荒らげると、男……春は何食わぬ顔で言った。
「なんだよって、そりゃあ、ここの生徒だけど?
用を足そうと思ってトイレに来たら変な場所に掃除用具入れがあるもんだから、邪魔だなぁって思って除けただけだけど、なにか悪い?」
「あ、ああ、わりぃよ!俺らは脱出ゲームしてたんだからよ!」
一人の男が苦しまぎれの言い訳を言いながら、春を睨みつける。
春は少し呆けてから、「プッ…っく、あっはは―!」と笑い始めた。
「なにがおかしいんだよ!」
男が少し顔を赤くしながら怒鳴る。
「っはは―…はぁ…お前、馬鹿だろ。助けて下さいって声、聞こえてないわけが無いでしょ。
なのに脱出ゲームしてたからって……あー久しぶりにこんなに笑ったわ。」
春は笑いすぎて出たのであろう涙を拭いながら言った。
「あー、もう掃除用具入れが退けたから出れるよ?」
「っ……あ、ありがとうございますっ!」
水樹は鍵を開けて個室から出た。
「……あれ、お前、熊野?」
「やっぱり、千葉くんだった、んだ。」
春は驚き、水樹はやはりという顔をした。