Secret Mission
「…あー。それは………もう授業が始まってるからだよ。」
「え、嘘ですよね!?いやいやいや、それでも何で探しに来ないんですか!」
水樹は春の襟を掴んで揺さぶりながら問いかける。
「ちょ…待て……けっこ、う、苦し……。」
……結構な強さで。
「あっ!ご、ごめんなさい!」
水樹はハッと手を離し、頭を下げて謝る。
春は少し首もとを押さえながら、大丈夫。と笑いかける……勿論、全然大丈夫では無いのだが。
「俺は具合悪いって言って出てきたからな。E組の奴らはサボりだろ、こいつらなんか探しに来る人なんていないよ。問題児だしな。」
―――…そうか、そうだよな、先生たちからしてはいないほうが嬉しいだろうし……。って、待て待て待て。いつの間にチャイム鳴ったんだ?
俺はそこまで留まったつもりは……。
いや、慌て過ぎて周りの音聞こえてなかったとか…あり得る、な。
水樹は頭を抱え、しゃがみ込む。
「………。」
10秒ほど経った後だろうか。濡れていた髪を掻き上げ、溜息をついてから立ち上がる。
「しょうが無い、ですね。……あ、れ?」
ふと、水樹は手に目をやる。
「ん?どうした?」
「っあ、ああああああ!」
手には携帯が握られており、その携帯は画面内に水が入り込んでいた。
「お、お……おれ……僕のスマホがああああああ!」
スマホを慌てながら開き、SDカードを取り出す。
「っ……良かった…これは無事だったぁ…。」
一切濡れてないSDカードを濡れてないポケットに入れ、渡辺たちを睨みつける。
「……よくもやってくれましたね。この代償は……高いですよ?」
手に持った使い物にならなくなったスマホを握りつぶしながら。