Secret Mission
水樹が綾人を押し退けて、リビングに行くとそこには驚きの人物がいた。
「熊野さん……なんでここに?」
そう今回の依頼人――と言っても、依頼をしに来たのは代理人のような人物であったが―の熊野一秀がいたのだ。
しかも、料理の支度をしながら。
「ん?ああ、瑞稀おかえり。」
「……ただいま。って違う!靴なかったのに、なんで?」
それを教えてくれたのは後ろからまた抱きつこうとしてくる綾人だった。
「驚かせるために、隠しておいたのさ。」
ふんと、胸を張って言ってはいるが、30代後半の男性がやってもあまり好感はもてない。
熊野は苦笑しながら水樹に謝った。
「済まないね。私はやめろと言ったんだが、綾人がやるっていうものだから…。」
そう言いながら、水樹を椅子に座らせる。
戸惑いながらも座ると、熊野がどんどん食べ物を運んでくる。
食べ盛りと言っても、女子。
テーブルが埋まるくらいの量を並べられたが、そんなに食べられるわけもない。
熊野たちも食べるようだがそれでもなくなる気はしない。
それぐらい多かった。
寄り道をしていたからか、時刻は6時48分。
速めの夕飯となるのだが、いつもより早い。
そう考えるともっと食べられないのではないかと思えてくる。
「さて、何日かたっちゃったけど、今日は瑞稀の転入祝いだよ。
お変わりはまだまだあるから、好きなだけ食べるといい。」
そう言ってはくれるが、気付いてないのだろうか。
水樹の笑みが引き攣っていることに。
「……はぁ…。」