【完】僕と君のアイ言葉
さっき私は田中くんに嘘をついた。
全部知っている宙は私のことを気遣って、
『田中。コイツ借りるから』
そう言うと私の手を引っ張って田中くんの前から連れ出してくれた。
宙に連れてかれている時、ふと彼のことを見てみたけれど。
彼は私達に見向きもせず誰かと電話をしていた…
そんな現実に、私の胸は何かに押しつぶされそうになった。
少しでも…私のことを考えてくれてもいいのに、なんて、思ってしまう。
けれど所詮。
私の片想い。
「…彩」
私達が来た場所はいつも田中くんとお昼を食べている屋上だった。
屋上の扉を開けると一気にジメジメした風が肌を伝う。
「…俺の前では無理するなよ?」
「…うん」
不思議と宙の前では自分を偽らないでいられる。
今の私に、そんな居場所を作ってくれたのはすごくありがたかった。