【完】僕と君のアイ言葉
下を向いて立っていると、宙に引き寄せられた。
私の体はスッポリと彼の腕の中に収まる。
「全部持ったまま、俺の所に来いよ」
彼は耳元でそう囁いた。
私は弱い。
だから…静かにコクリと頷いた。
その反応を確かめるかのように、宙は私を抱きしめる力を込める。
私も必死にそれに答えようと彼の背中に腕を回した。
田中くんのことが好きなのに。
田中くんに昨日別れを告げたのに。
昨日の今日でこんな手を使うのは卑怯だと思う。
傍から見たら、ただの軽い女。
だけどね、今の私にそれらを考える余裕なんて無かったんだ。
今を生きるのに一所懸命だった。
宙…
「ごめんね…」
彼は私の言葉を黙って聞いていた。