【完】僕と君のアイ言葉
『…そっか。じゃあ、帰ろうか!』
昨日の帰る時の宙。
昔から宙のことを知っているのに、見ているのに、幼馴染みなのに…
どうして宙の異変に気づかなかったんだろう。
私は宙の優しさに甘えすぎだ。
『彩!これ返すの忘れてた!』
『それじゃあ、俺行くね!』
今日だって。
教科書を返す時いつも通りに接してくれて。
私のこと怒っていいのに。
私のこと責めていいのに。
宙を傷つけないって決めたのに。
ガラガラッ!!──
「宙!!!」
私は勢いよくドアを開け名前を呼んだ。
もちろんクラスは授業中。
宙のクラスメイトは何事かと私に視線を集めるが、そんなことを気にせず宙の元へと歩み寄った。
「宙…ごめんね」
歩み寄り言葉を口にすると、涙が出てきそうになる。
「彩…」
「…ごめんっ…」
ここで泣いたらズルくなる。
けれど耐えれば耐えるほど目に涙が溜まっていく。
「彩、行くよ」
そんな私の手を握って、宙は教室を出た。