【完】僕と君のアイ言葉
彼はいつもどおり。
辛そうな表情もなにもなく、私が心配するまでもなかったんだ。
「そうじゃないもん」
「なんだ残念。てっきり僕のこと好きになってくれたのかなって期待したじゃん」
「なっ…!!!」
そんなこと冗談でも言わないでよ。
この気持ちを忘れることが出来ていない今、その言葉は心臓に悪い。
「あれ?図星?」
「…「なーんてね。君が宙くんのこと好きなのは知ってるから」」
「そうよ」
田中くんと一緒にいると彼のペースに呑み込まれてしまう。
「そろそろ帰るね」
このままここに居ても落ち着かないし、なにより彼のペースに呑み込まれるわけにはいかない。
宙という存在がいるにも関わらず。
「送ってくよ」
彼は私に気を使って言ってくれたが、断った。
「荷物運んでくれてありがとう。そしたら明日の遠足でね」
「お、おう」
私はそう言うと田中くんの家をあとにした。