【完】僕と君のアイ言葉


けれど、空き教室から話し声が少し聞こえてきた。

どうやらこの場所には先約がいたらしい。



バレないうちに愛奈の元へと戻ろうと背を向ける。

だけど次の瞬間、



「田中くんは…」



という声が聞こえ私の歩く足は止まり、聞き耳を立てていた。



中から聞こえてくる声は、紛れもなく田中くんの声で、あとは女の人の声。



こんな人気のない場所で話しをするとか…

相手は吉田先生に決まってるよ。



「私をこんな所に呼び出すとか、田中くんも懲りないのね」



「由結は僕に会いたくなかったの??」



…由結って、吉田先生の下の名前だ…

こんな田中くん初めてだ。



「やめて、冗談きついわ。それに学校では先生と呼んで」



「由結先生」



空き教室の中からは田中くんの明るい声が聞こえる。

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