【完】僕と君のアイ言葉
「っ…「ぅっ…」」
その時、微かだが私の声と重なった音が聞こえた。
私と一緒で、声をこらえて泣いているかすれた泣き声。
私は涙を拭いながら隣のベンチを見た。
「…」
そこにはベンチに腰かけ、手で顔を覆いながら泣いている男の子の姿があった。
その姿はまるで、私自身を見ているみたい。
彼は綺麗な顔立ちで、その瞳から流れる涙はとても美しかった。
そんな姿に泣くことも忘れ見とれてしまう。
…この人、失恋したんだ。
なにも根拠はなかった。
ただ私が失恋したから、そう決めつけてしまっただけ。
それからどれぐらいの時間が経ったのだろう。
私は黙って下を向いていた。
赤の他人の2人。
なのに、お互い相手を無視して帰ることはなかった。