【完】僕と君のアイ言葉
「じゃあ、また明日」
「うん、明日ね」
挨拶をすると田中くんは駆け足で行ってしまった。
私はというと、宝物の携帯を握りしめ田中くんの後ろ姿を眺めた。
姿が見えなくなるまで眺めていようと思ったが、すぐに立ち止まっていた。
そして、手を振っていた。
もちろん…
私じゃない。
田中くんの前には、吉田先生がいた──
そして2人は私の方を見ることなく並んで歩いて行ったんだ。
私がしっかりと握りしめている宝物の携帯は寂しく、こんなことではしゃいでいた私がバカに思えてきた。
せっかく頑張るって決めたのに…
田中くんと吉田先生は2人で会う仲で、きっといつもの用事はこのことなんだ…
所詮〝彼女〟という立場はただの仮にしかならない。