隣のアイツは、溺愛俺様ウソ彼氏。
***
んーっ、美味しそう。
しばらくしてキッチンからリビングに漂ってくるバターのいい匂い。
トントンという心地よく、規則正しい包丁の音から、ジューっと焼ける音がして、美味しそうな匂いに変わる。
それが料理が完成に近づいていることを感じさせる。
「宙、いい主夫になりそうだな」
「茉奈ちゃん、碓氷くんに負けないように頑張らなきゃねっ」
「うん、そうだねー……って!」
これじゃ負けを認めてるみたいなものじゃん!
「茉奈ちゃん、すっかり宙に胃袋掴まれてるでしょ?」
「たしかに…って!」
あぁ…普通は逆でしょ?
私が作って宙の胃袋を掴んで…って言うのが理想のカップル像……?
ん?
なんで相手が宙になってるのよ!
あー消えろ消えろ消えろっ!
頭から宙を消すように、手をブンブンと振る。