隣のアイツは、溺愛俺様ウソ彼氏。


「ありがと、宙」



「なんだよ、気持ち悪い」



「気持ち悪いって!ありえない。このバカ宙っ!」



せっかくなんかいいムードだったのに!



台無しだよ、この野郎。



振りほどこうとしてもほどかれない私たちの手。



宙は離してくれなかった。



それは、目的地についても。



そこは、花火を真正面から見ることが出来る穴場スポット。


なのに、人が少なくて知る人ぞ知るスポット。



去年見つけたんだ。



来年はここで見ようってみんなで約束したっけ。



宙は覚えてたんだね。



ふたりで草はらに腰掛ける。



花火の打上げまであと5分。



私たちの間には沈黙の時間が続いた。


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