わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【後編】〜
にっこりと微笑む桜ちゃんの姿をした『この子』。
私を含む全員が同じことを考えたのだろう、じりじりと後退りした。
逃げなければ…。
タイミングをうかがっていると、ふと『この子』が目を細めた。
そして、右手の人差し指を立てて口元に当てた。
「………あのね。
ちょっと、秘密を教えてあげる」
「……………え?」
『この子』の言葉に、後退りしていた誰もが足を止める。
………秘密?
それは…ここから抜け出すのに必要なもの?
………ううん。
『あの子』が来るまでの時間稼ぎ…かもしれない。
でも、気になる。
もしかしたら…と言う思いが、私たちをこの場に引き止める。
「あたしはね、『あの子』とは違うんだよ。
あたしは1回目…えっと、あの佐久間先輩をいじめてたっていう5人をここに閉じ込めた時は、いなかったんだぁ。
あたしが来たのはそのあと。
それまでは『あの子』しかいなかったんだけど、あたしも本名で呼ばれるわけにもいかないでしょ?
だから、『あの子』と『この子』って名前をね、貰ったの。佐久間先輩に」
嬉々として話し出す『この子』に、どうすれば良いのかわからなくなってくる。
逃げるべき?聞くべき…?
最初からいた『あの子』。
今回から現れた『この子』。
…………。
本名?
本名…ってことは…もしかして、人間?
いや…佐久間さんと同じく、幽霊って考えた方がいいかな。