わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【後編】〜
「……皆、逃げて…!!」
狛くんと『この子』の話につられて反応が遅くなってしまった私は、同じくただ『あの子』を見つめて固まっているみんなに、1拍遅れて叫んだ。
それにハッとして全員の足が動く。
ただ、こうなることを予測していたのか、狛くんだけはじっと『この子』と『あの子』を見ているだけだった。
それにしてもこの距離。
『あの子』は足が意外と早い。
逃げ切れるの?
こんなに短い距離で…。
「――――――私が引き付けるわ。
皆は逃げて」
そう、凛とした声で前に進み出たのは…朱里さん。
もう逃げ出そうとしていた私たちも、思わず足を止めて振り返る。
「なにしてんだよ!
さっさと逃げるぞ!」
「無理よ!
こんな短い距離で逃げ切れやしない!
私の…私のせいで、桜は死んだわ。
桜がゲームクリア出来ていれば、こうならなかったかもしれない。
だから、今度は私が死ぬわ。
桜を守れなかったぶん、皆を守る!
佐久間に信じて貰えなかったのは私のせいだから。
上手く言葉に出来ない私のせいだから、せめて最後に行動で示させて」
「………朱里、さん………」
死ぬのは、誰だって怖いだろう。
今にも涙を溢しそうな目を必死に堪えて『あの子』を睨み付ける朱里さんは…綺麗だと、思った。
佐久間さんが死んだのが、悲しくなかった訳じゃない。
ただ、上手く言葉に出来なかっただけで。
伝えるのが、下手だっただけで。