わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【後編】〜



廊下を全力疾走して、前方にそれらしき人を見付ける。


暗闇の中の背中しか覚えていないけれど、あれは間違いなく狛くんだ。


何故か、そんな確信があった。



「狛くん!!」



肩で息をしながら声を張り上げると、その背中はぴたりと歩みを止めた。


やっぱり…狛くんだ。


振り返ったその顔を、見間違えるはずもない。



「狛…お前、今までどこに…」


「……俺は」



悠人の声を遮って狛くんが言う。



「俺は…また転校して、前の学校に戻る」


「…………は?」


「……………」


「……狛くん!!」



それだけ言って踵を返そうとする狛くんを、咄嗟に引き留める。


何を言おうと思ったわけじゃない。


けど、勝手に言葉が口をついたみたいに、私の口は動いた。



「狛くん…この呪いを止める方法、教えてよ」



すでに私たちに背を向けていた狛くんが、チラリと視線だけでこちらを向いた。


そして、すっと目を細めて口を歪めて。



「止めたいのなら…来いよ。
デッドカースはまだ終わっていない」



そうして再び歩き出した狛くんを追いかけることは出来なかった。


最後の言葉、その声音には、何か私たちに希望を持っているような…そんな響きが含まれている気がして。



「…行くしかないみたいね」



朱里もそれを感じ取ったのか、ポツリとそう呟いた。








< 166 / 168 >

この作品をシェア

pagetop