わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【後編】〜
廊下を全力疾走して、前方にそれらしき人を見付ける。
暗闇の中の背中しか覚えていないけれど、あれは間違いなく狛くんだ。
何故か、そんな確信があった。
「狛くん!!」
肩で息をしながら声を張り上げると、その背中はぴたりと歩みを止めた。
やっぱり…狛くんだ。
振り返ったその顔を、見間違えるはずもない。
「狛…お前、今までどこに…」
「……俺は」
悠人の声を遮って狛くんが言う。
「俺は…また転校して、前の学校に戻る」
「…………は?」
「……………」
「……狛くん!!」
それだけ言って踵を返そうとする狛くんを、咄嗟に引き留める。
何を言おうと思ったわけじゃない。
けど、勝手に言葉が口をついたみたいに、私の口は動いた。
「狛くん…この呪いを止める方法、教えてよ」
すでに私たちに背を向けていた狛くんが、チラリと視線だけでこちらを向いた。
そして、すっと目を細めて口を歪めて。
「止めたいのなら…来いよ。
デッドカースはまだ終わっていない」
そうして再び歩き出した狛くんを追いかけることは出来なかった。
最後の言葉、その声音には、何か私たちに希望を持っているような…そんな響きが含まれている気がして。
「…行くしかないみたいね」
朱里もそれを感じ取ったのか、ポツリとそう呟いた。