現状報告、黒ネコ王子にもてあそばれてます!【試し読み】
「そうなの? どんな人か、あんまり知らなくて……」
「お局様だけじゃなくて、先輩達も『これから目の保養のために毎日インテリア事業部に行こうかなぁ』って言ってたくらいだからねぇ。しかも、本気っぽかった」
「そ、そうなんだ……」
ほかの課でウワサになるほどカッコイイ人と毎日一緒に仕事……しかも、隣の席なんて。ドキドキして心臓がもたないかも。
でも、それでイヤなことを忘れられるなら、ちょうどいい。
「テレビ見なくてもイケメンに会えるなんて最高じゃない。人事課の情報を見たら独身だったよ。フリーだったら狙うのもアリよ」
未香子が楽しげにわたしの肩を叩く。
「あっ、でも……わたし、しばらくそういうのは……いいかも。今は仕事を頑張りたいから」
カッコイイ先輩が来たらドキドキはするだろうし、仕事へ行く楽しみができるのはいいけど、恋愛したいと今は思えない。
わたしの事情を知っている未香子は、申し訳なさそうに肩からそろりと手を引っ込めた。
「あっ、そうだよね……つい、元気になってほしくて言っちゃった」
「ううん、ありがとう」
未香子がどういう気持ちで言ってくれたのかはわかる。わたしがお礼を言うと、彼女もホッとしたように頬をほころばせた。
「じゃあ……わたし、ほかの部も回らなくちゃいけないから。また、ご飯行こうよ。落ち着いたら連絡ちょうだい」
「うん、わかった」
慌ただしくインテリア事業部のオフィスを出て行く未香子に、軽く手を振る。姿が見えなくなると、わたしは仕事を再開することにした。
しかし、新しくやってくる人のことが頭によぎる。
ほかの部署でも話題になるほどカッコイイ人って、どんな人だろう……そろそろ来てもいい頃だけどなぁ……。
少しだけ気になってソワソワしていると、お手洗いへ行っていたふたりの先輩、藤本美奈子(ふじもとみなこ)さんと桃原瞳(ももはらひとみ)さんが戻って来た。