現状報告、黒ネコ王子にもてあそばれてます!【試し読み】


“今年こそ結婚!”と婚活に励んでいる三十二歳の藤本さんはショートボブがよく似合う美人で、どうして結婚できていないのか不思議なくらい。

対する桃原さんはひとつ下の三十一歳で、去年結婚したばかりの幸せな新婚さん。

姉御肌でしっかりした藤本さんと、結婚しても相変わらずほんわかした桃原さんは正反対に思えるけど、バランスがいいみたいでよく一緒にいる。わたしのことも可愛がってくれる、ふたりともいい先輩だ。

桃原さんはわたしの向かいの席に座り、彼女の右隣に藤本さんが座った。

わたし達がいるオフィスはインテリア事業部のフロアで、コーディネート課のほかに販売課とレンタル事業課が入っている。

コーディネート課には課長を合わせて二十一人が所属し、十個のデスクを向かい合わせに並べた島をふたつ作っている。そのふたつから離れたところに、部長と各課長の席がある。

「水門さん、今度来る人ってどんな人か聞いたことある?」

桃原さんは席に着くなり、ニコニコとした笑顔をわたしに向けてきた。

どうやら、桃原さん達も新しい人のことが気になっていたらしい。

「さっき、人事課の同期に相当カッコイイ人というのは聞きましたけど……」
「ほらー、藤本さん、今度こそ狙い目ですよ。年下いきましょう!」

わたしの答えを聞き、桃原さんがクリリとした目で藤本さんを見る。藤本さんはあまり乗り気ではないのか、奥二重の涼しい瞳をニコリともさせない。

「えー……彼のこと知ってるけど、わたしのタイプじゃないのよ。彼のほうもわたしに興味ないだろうし、お互い無関心よ。それに……」

藤本さんは言葉を切ると、わたしの左斜め後ろにあるコーディネート課の課長席を冷ややかな目で見た。

そこに座っているのは、白矢木真人(しろやぎまこと)課長。

スッキリと整えられた髪は色素が薄く、色も白くて痩身、柔らかな顔立ちは全体的に調和が取れている。スーツをキチッと着こなした姿は、真面目で温和な課長の性格がそのまま現れているようだ。

しかし、白矢木課長の同期である藤本さんはそんな彼をうとましく感じているみたい。


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