チョコレイトと親不知
「紗莉?」
視点の定まらない私を心配して、ダイスケが声をかける。
「あの、ダイスケ、」
「ん?」
「もう少し一緒にいてもいい?」
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なんだかとても大胆なことをしている気がした。
「ごめん、汚なくて」
「ほんとに汚いのな」
「…ごめんて」
「うそうそ。俺の部屋よりはマシ」
そう言ってダイスケは私の部屋に上がった。
"もう少し一緒に居て"なんて、なんで言ってしまったんだろう。
改めて感じる自分の部屋のだらしなさに、過去の自分を呪った。
部屋に人が来ることなんて滅多になかったから、この特異な状況に違和感を感じてそわそわする。
「寂しいんだね」
「え?」
「ヤスが居なくなって」
ダイスケは私のベッドに座って、優しく笑った。
「なんで?」
「だって、じゃなきゃ男を部屋に入れたりしないでしょ、紗莉は」
ダイスケの意外な台詞に動揺する。
「男って…だってダイスケじゃん」
「ダイスケだって男だよ」
「でも友達だし」
必死に笑って平静を装うけど、ダイスケは全部お見通しなのかもしれない。