チョコレイトと親不知
確かに、ちょっと気を抜きすぎたかも。

長い付き合いだからって、仮にも男の子を部屋に入れるのは危ないことなのかも。


「紗莉、こっちおいで」

ダイスケが右手を私に差し出す。

「え、な、なんでよ」

「いいから」

ダイスケは半ば強引に私の腕を掴んで、私をベッドに座らせた。


「ねぇ、ちょっとだけ告白してもいい?」


「…は?」

「俺ね、入学したばっかの頃、紗莉のこと好きだったんだよ」


ダイスケは真っ直ぐに私の目を見つめた。

「え、な、な?」

いきなりの言葉に自分の顔が赤くなるのを感じた。

「なに?からかってんの?」

「この状況でからかうかよ」

「でも…」

ダイスケが私なんかを好きだったわけがないのに。

「紗莉はおとなしくて、一匹狼で、学校に馴染めるか心配してたんだけど、いつの間にか親心が恋心になってたっつーか」

「うそ」

「うそじゃねーって。でも、紗莉はヤスと付き合ったろ?」

「…うん」

「だから俺の出る幕はなく、大学生最初の恋は儚く散りましたとさ。ちゃんちゃん」


なんで今頃、そんなこと言うの。

こんなに弱ってる時に、そんなこと言わないでよ。

「でも、いまなら紗莉を独り占めできる」

「え?」

「いい?」

そう言った瞬間、ダイスケの手が私の肩に伸びて、ぐいと抱き寄せられる。

暖かくて、柔らかくて、体中が熱くなる。

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