ランチタイムの王子様!
「どうですか?」
そう尋ねると、王子さんはポタージュを掬っていたスプーンを置くなり何とも言えない苦い顔つきになった。
「塩味が少しきついですね。途中で味見はしましたよね?」
「しましたよ……?」
「本当に?」
鋭い瞳で追及されてしまえば、私に逃げ場はない。おそるおそる、ことの次第を白状する。
「すいません。途中から薄いんだか、濃いんだかよく分からないことになって、塩を足しました……」
「味見のし過ぎです。当初の予定量の半分しか残っていなかったのはそのせいですね」
「申し訳ありません……」
……だって、ポタージュが美味しかったんだもん。
あまりの美味しさに一口、あと一口と王子さんの目を盗むようにして、味見をしているうちに味覚がすっかり麻痺してしまったようだ。
麻痺した舌で味見をすることによって、更に調味料を足してしまう……なるほど、これが味見マジックというやつか。
王子さんの言う通り、計量スプーンや計量カップを使って、使用する調味料を計って入れるようにしたら、味付けに関する悩みはグッと減ったはずなのにとんだ落とし穴に嵌ってしまった。
いやあ、反省、反省。
「味見をし過ぎて分からなくなった場合は、水で口をゆすいでください。ポタージュは次回作り直しです」
「はーい……」
ごめんなさい、牛蒡のポタージュさん。
私が不甲斐ないばかりに、罪のないあなたまで巻き添えにしてしまいました。王子様は料理に関しては妥協も手抜きもしない。
「ムニエルはなかなか良く焼けていますね」
ポタージュは作り直しを命じられたわけだが、その一方でムニエルは及第点をもらうことが出来てホッと一安心である。