ランチタイムの王子様!
「お姉ちゃん!?」
「あら?偶然ね?」
つぐみ姉はいけしゃあしゃあと言ってのけると、私が持ってきたコーヒーをにんまりと微笑みながら喉に流し込んだ。
偶然なわけないでしょう!?
使い古された言い回しを選ぶあたり、最初から信じさせる気はないようだ。
「あら?もしかして姉妹ですか?」
「ええ、そうなんです」
ブライダル担当の海東ゆりあさんは、つぐみ姉が書いたであろう顧客登録カードを見て意外そうな様子で私達の顔を見比べた。
ゆりあさんはふわりとウェーブのかかった髪に、卵形の輪郭、長い睫毛がため息ものの美しさの素敵な先輩だ。
天使のような可憐な容姿に似合わず、激辛好きという一面を持っているのがまた凄い。
ルージュランチでは必ず唐辛子とハバネロのコンビ料理を作る猛者故に、“激辛姉さん”の異名を持つ。
その辛さは命知らずの猛者が一口食べた途端に白旗挙げて逃げ出すレベルである。そんなものをどうやって調理しているのか甚だ疑問だ。
「じゃあ、ひばりちゃんにも手伝ってもらおうかしら?」
「へ?」
「望月さん……ええと結婚したら飯田さんになるんでしたっけ?ご自身の結婚お披露目会をフィル・ルージュにお任せしたいというご希望なの」
「え――――!?」
私はつぐみ姉とゆりあさんがいるのにもかかわらず、応接間でこれでもかと大声で叫んでしまったのだった。