ランチタイムの王子様!

「それにしてもお姉さんは厳しいお方ですね。あなたの仕事ぶりをチェックするためにうちの会社を選んだのでしょう?」

否定も出来ず、肯定も出来ず、うぐっと言葉に詰まる。

王子さん、ちょっと勘が鋭くありませんか?

「つぐみ姉は私が前の会社を辞めることになった理由を知っているので……」

ああ、思い出したくもない!!

私は顔をふるふると横にふると、これ以上追及されない内に洗った食材達をまな板の上に置いた。

「さあ、続きをやりましょう!!今日は秋野菜のラタトゥイユですよね!?」

さつまいもとなすを両手に持ってはしゃいで言っても、王子さんはピクリとも表情を変えなかった。

「前の会社を辞めた理由とお姉さんに何か関係があるんですか?」

……誤魔化そうったってそうは問屋が卸さないのが王子さんでした。

こうなったら仕方ないと覚悟を決めて、口を開く。

「会社の人には内緒にしてくださいね……」

聞くも涙。語るも涙。私の転職物語、聞いてもらえますか?

< 121 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop