ランチタイムの王子様!
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誰もがリクルートスーツに身を包み、髪を黒色に染め直す大学4年生の夏。
「まさか、ひばりが大企業から内定をもらうなんてねえ……」
「私もびっくりしちゃった」
私はしみじみと言う友人にえへへと照れ笑いして、互いの前途を祝して盃をあげていた。
年々変わる就職活動を巡る世間の情勢にえっちらおっちら流されながらも、なんとか内定をもらえることができたのも、ひとえにつぐみ姉のおかげだった。
企業分析に始まり、履歴書の書き方、面接の練習まで付き合ってくれたおかげで、誰もが知っている大手家電メーカーで事務職として採用されることがきたのだ。
身の丈に合っていないのは重々承知していたが、就職活動が終わった解放感の前では些細な問題のように思えた。
そうやって……呑気に構えていた私が厳しい社会の洗礼を受けたのは翌年の春のことである。
配属された経理課に、課長よりもおっかないお局がいるとは誰が予想できたであろう。
もともと要領の良い方ではなかったし、大手家電メーカーから内定をもらったこと自体が幸運と言えるほどの不器用な私がお局のターゲットになるのは必然とも言えた。