ランチタイムの王子様!

(ケーキ♪ケーキ♪白凰堂のロールケーキ!!)

廊下を軽やかにスキップする姿にドン引きしていたのは、課内の人間だけではないだろう。

……私はこれ以上ないほど浮かれていた。

だって白凰堂のロールケーキが食べられるんだもん!!

白凰堂のロールケーキはデパ地下でも人気のスイーツで2時間待ちは当たり前、売り切れ御免の一級品である。

甘さ控えめ、しつこさ皆無のとろける生クリームとふわふわ卵のスポンジの見事なコラボレーションと言ったら垂涎ものである。

(たまらん!!)

お局に日々虐げられている私を哀れに思った課長が、取引先からもらったものをこっそり分けてくれたのだ。お昼休みに堪能しようと課内の共有冷蔵庫に大事にしまってあるのを、それはそれは楽しみにしていた。

希望が絶望に代わったのは、鼻歌を歌いながら共有冷蔵庫の扉を開けた時である。

(あれ……?)

私は受け入れがたい現実を再認識するために瞬きをして、もう一度冷蔵庫の中を見た。

……午前中に大事にしまっておいた白い箱がどこを探しても見当たらない。

つまりは私のロールケーキちゃんがない!!

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