ランチタイムの王子様!
ロールケーキが私の物だって分かっていて食べたんですよね?
いつもの嫌がらせのひとつだろう。
楽しみにしていたロールケーキを横取りして、泣き寝入りするのを待っているのだ。
けれど、この人はなにも分かっちゃいない。
やっていいことと、悪いことの区別もつかないのか。
食べ物の恨み……晴らさでおくべきか……!!
「行き後れ婚活モンスター……」
「……は?」
「行き後れ婚活モンスターって言ったんですよ。お見合い37連敗中なんですよね?アラフォーにもなって若いって理由だけで新人をいたぶるような人に結婚なんて出来ませんよ?」
これまでのうっぷんを晴らそうと、煽るようにあえてニッコリと微笑んでみせる。
相当、頭に血が上っていたのだと思う。
ナチュラルに他人の欠点をえぐってしまうなんて、私ってばとんでもないスキルを隠し持っていたらしい。
「な……なんですって―――!!!」
正気に戻ったのは……発狂したお局が逆上して鬼の形相で掴みかかって来た時である。
髪の毛をグイグイ引っ張られ、制服をひん剥かれそうになり、首をぎゅうぎゅうと絞められ、霞んでいく視界で思ったのは己の迂闊さだった。
(やっ……やっちゃった?)
最悪な職場環境に自分で火に油を注いでしまった私は、この時ついに転職を決意したのである。