ランチタイムの王子様!
**********
私は日曜日にも関わらず王子さんのマンションに来ると、オートロックの自動扉の前で機械を操作し家主を呼び出した。
「王子さん、入れてください」
インターホン越しに見えない相手に呼びかけると、くぐもった機械音が返ってきた。
『どうしたんですか?今日は日曜日ですよ』
「……いいから入れてください」
いつになく強気になっている私に多少の戸惑いはあったようだが、王子さんはすんなり自動扉のロックを解除してくれた。
王子さんは突然の訪問にもうろたえず、不思議そうに首を傾げて出迎えてくれた。
「忘れ物ですか?」
エレベーターを上がって部屋の前まで来るのに3分ほどしかなかったというのに、王子さんの身なりはキチンと整っている。
起き抜けのねぼすけ顔をちょびっと期待していたのに、拍子抜けである。休日は部屋着のジャージでぐーすかと惰眠を貪っている私とは訳が違う。
とは言っても、もうお昼を回っているところだが。
「買ってきました」
私は持っていた白い箱をずいっと王子さんの目の前に差し出した。
「“白鳳堂のロールケーキ”……ですか?」
王子さんは箱に印字された白鳳堂のロゴを見るなり眼鏡のフレームを上に押し上げ、目をパチクリとさせた。