ランチタイムの王子様!
「紅茶にします?コーヒーにします?」
「紅茶で……」
そう言うと王子さんはティーポットに茶葉を入れてお湯を注いだ。ポットが冷えないようにカバーを掛けて、砂時計をひっくり返して待つこと3分。
茶葉が開ききったところでティーカップに紅茶を注ぐと何とも言えない良い香りがしてくる。コーヒーも美味しかったけれど、紅茶の淹れ方も抜群にうまい。
王子さんという人には弱点はないのか?
切り分けたロールケーキがお盆にのってやってくると粗探しが中断された。
「いただきます」
王子さんはフォークでロールケーキを割って、スポンジとたっぷりのクリームを掬い取った。
普通はスポンジにクリームを塗ってくるくるとロール状に巻くから、“ロールケーキ”なわけだけど、白鳳堂のロールケーキはスポンジを一巻しかない。中心部分には甘さ控えめのクリームがこれでもかと詰まっている。
ロールケーキ界に革命を起こした風雲児は、肥えた舌をお持ちの王子さんに果たして通用するのだろうか?
私は自分が食べることも忘れて王子さんの感想をひたすら待っていた。
そして、待望の瞬間が訪れる。