ランチタイムの王子様!
「美味しい……ですね……」
王子さんはロールケーキの美味しさに目を見張っていた。
甘いものが苦手な男の人だってひと巻ぺろりと食べられるくらい、濃厚な味の中にも上品な甘さを持つ一品なのだ。
「ですよね!?」
期待通りの反応をもらえて、すっかり安心した私もパクリとクリームを口に入れる。
あまりの美味しさにお行儀悪く足をばたつかせ悶絶してしまった。
もう!!超、美味しい!!ほっぺたが落ちちゃいそう!!
「あなたは本当に美味しそうに食べますね」
「私の唯一の取り柄は好き嫌いがないことです!!」
野菜だって、魚だって、お肉だって、何だって美味しく食べられちゃう。
王子さんに料理を習い始めてから、実はこれってすごく幸せなことなんじゃないかと思うようになっていた。
「やっぱり、自分が美味しいって思ったものを他の人にも同じように感じてもらえるのって嬉しいですよね」
それはデザートに限った話ではない。
コンビニで売っているお弁当も、スーパーで買ったお惣菜も、誰かが作った手料理だって、“美味しい”を共感してもらえれば何だって構わないわけだ。
同じ食卓に肩を寄せ合って座れば、みんな仲間である。
あ、そうか。
これが、ルージュランチを形作る元になっているんだ……。
どうやら私は自分でも知らぬ間に随分と、フィル・ルージュの社員の一員らしくなっていたようだ。