ランチタイムの王子様!
「……良かった。まだ居ましたね」
声の主はデスクの下で震えていた私の姿を見つけると、何だか嬉しそうに隣の席から椅子を引き寄せた。
縮こまっていた身体からガクッと力が抜けて、床に手と膝をついて四つん這いになる。
「王子さん……」
「もしかして驚かせてしまいましたか?」
助け起こすように差し伸べられた手を、問答無用で掴む。
「当たり前です……!!」
不審な輩ではないことに安心して、これでもかと八つ当たり気味に言い放つ。
まさか戻って来るとは思わなかったんだもん!!びっくりするよ!!
「それで、どうして戻ってきたんですか?」
スカートとブラウスについた埃を祓いながら尋ねると、王子さんは片手に持っていたランチバッグを掲げて、お得意の眼鏡クイを決めた。
「夜食を作ってきました」
「え!?」
「あなたのことだから、食事も摂らずに作業に勤しんでいるのではないかと思いまして」
もしかして、わざわざこのために戻ってきたの?
「さあ、食べましょう」
王子さんの作った夜食と聞いて、つい喜びが表情に表れてしまう。
ガシっとランチバックを掴んで、小さく胴上げ。王子デリバリー。なんて贅沢な響き!!
(嬉しいっ!!すっごくお腹空いていたんだー!!)
デスクを光の速さで片付けて、ランチバックの包みを解く。
浮かれながらステンレスのお弁当箱の蓋を開けると、香ばしいチーズの匂いが食欲をそそる。