ランチタイムの王子様!
余興やスピーチもあらかた終わり、そろそろ宴のたけなわという頃合いになると、ゆりあさんは腕時計から顔を上げ、険しい表情で告げた。
「望月さん、そろそろ新郎の挨拶の時間だからご新婦に席に戻るように促してもらえる?」
「はい」
お披露目会ももう終盤。あとは新郎から招待客に対するお礼のスピーチと両親への花束の贈呈を残すのみとなった。
私は会話の邪魔にならないように、そろりそろりと新婦に背後から近づき耳打ちをした。
「……ご新婦様、そろそろお時間です」
「もうそんな時間?」
楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。
つぐみ姉は友人達にしばしの別れを述べると、室内に誂えた新郎新婦席に戻るために身を翻した。私は例によってドレスの裾を掴んでそのお供をする。
「いやあ~。望月さんが結婚なんて感慨深いねえ~」
その時、つぐみ姉の歩みを遮ったのは、かなりお酒に酔ったちょび髭の男性だった。フラフラの足元を見る限り、ほろ酔いと言える段階はとっくに通り越しもはや泥酔に近い。