ランチタイムの王子様!
王子さんは隣に置いてあったパイプ椅子に腰掛けると、黙って自分も缶コーヒーを飲み始めた。
ゆりあさんと王子さんに沢山迷惑をかけてしまったと思うと、気分が更に滅入ってしまう。
「私……つぐみ姉のお披露目会を台無しに……。きっと、フィル・ルージュを辞めさせられちゃいます。あ、あんなに頑張ったのに……っ……!!」
スチール製の缶が潰れてしまうんじゃないかってくらい、手に力を籠めてしまう。
結局、私はドジで間抜けで要領が悪くて、前の会社を辞めた時から一ミリも変わっていないのだ。
王子さんだってきっとこんな私のことなんて呆れているに決まっている。
「……お姉さんはイカを食べると蕁麻疹が出る体質だそうですね?」
私はハッと王子さんの顔を見上げた。
「どうして……そのことを?」
「新郎様から話を聞きました」
王子さんは缶コーヒーを飲み干すと缶を床に置き、更に話を続けた。
「あの時、お姉さんに差し出された皿にはイカとトマトのオイル炒めがのっていました。あれほどしつこく薦められたら食べない訳にはいきません。
あなたはスタッフとしてやるべきことをやりました。方法は乱暴でしたけどね。お姉さんもそれは分かっているはずです」
王子さんは私の手からカフェオレを奪い取ると、ピトッと頬に当てた。