ランチタイムの王子様!
「冷たっ!!」
冷たい缶を頬に当てるなんて嫌がらせ以外の何物でもない。
「いきなり何するんですか!?」
「落ち込んでいる暇があるなら、言いたいことをお姉さんにキチンと伝えなさい。私にロールケーキの素晴らしさを熱弁した時のふてぶてしさはどこに行ったんですか?」
そう言われると、返す言葉が無くなってしまう。
「でも……」
「あなたは不器用なだけで、やれば出来るんです。その証拠にアルバムだって褒めてもらえたんでしょう?」
王子さんはプルタブを開けると、カフェオレをもう一度に手渡した。
何だか……涙が出そうになった。
……王子さんは分かってくれた。
私がこの日の為に一生懸命準備してきたことも、つぐみ姉を助けたくて飛び出したこともちゃんと分かってくれた。
その上で、立ち向かえと叱咤激励しているのだ。
「荷物を取ってきます。その足ではひとりで帰れませんからね。送って行きますので、少し待っていてください」
王子さんが荷物を取りにスタッフルームに行くと、私はカフェオレをちびちびと啜り始めた。甘いはずのカフェオレはちょっぴり涙の味がした。