ランチタイムの王子様!
「私、この会社でもっと頑張りたいの!!つぐみ姉から見たらまだまだかもしれないけど、やっと自分の居場所を作りたいって思えたの!!だから……まだ辞めたくない!!」
よほど気を張っていたのか一気に捲し立てると、ぜえぜえと息が切れた。
(言えた……)
言いたいことを言ったら胸の奥のつかえが取れて、すっきりした気がする。
そっか……。
私はずっと優秀なつぐみ姉に引け目を感じていたんだ。だから、無意識の内に煩わせてはいけない、逆らってはいけないと思い込んでいたのだ。
「ごめんなさい……」
つぐみ姉には沢山迷惑をかけたし、甘えてばかりいた。それでも、私は自分の我儘を突き通したい。
「……あなたの好きにしなさい」
つぐみ姉はそっと目を伏せると、静かに微笑んでくれた。
「イカを食べると蕁麻疹が出ること、覚えていたんでしょう?おかげで助かったわ。ありがとう、ひばり。それだけ伝えにきたの。あとは、あなたの好きにしなさい」
寛大なつぐみ姉の言葉に瞳が潤んでいく。今ならきっと素直に言える。
「つぐみ姉!!結婚おめでとう」
私は久方ぶりに大好きな姉に抱き付いた。つぐみ姉に抱き付ける特権は今日から弘忠さんの物になったけれど、今だけは許して欲しい。
「もう、泣き虫ねえ」
そう言って頭を小突かれると、ここ数カ月のわだかまりが解けていくようだった。