ランチタイムの王子様!

「仕事も出来て?料理も上手で?」

ゆりあさんまでケラケラ笑いながら麻帆さん渾身のギャグに乗っかろうとするから、私は苦笑いするしかない。

「そうそう。でも、悔しいけど王子の作ったポテトサラダ、絶品なのよね……」

麻帆さんは虚空を見つめてほうっとため息をついた。

「バッファローウイングもお忘れなく」

激辛好きのゆりあさんも、王子さんの料理には一目置いているらしい。

「あ、グラタンもとっても美味しいですよね!!」

話題に乗り遅れないように王子さんの手料理をあげた途端、先輩方おふたりの空気が変わった。

「……グラタン?」

麻帆さんとゆりあさんは互いの顔を見合わせると、私に聞こえないようにコソコソと小さな声で内緒話を始めた。

(え!?何か変なこと言っちゃった?)

暖房も効いていて温かい室内で嫌な感じの冷や汗をかいてしまう。

「ひばりちゃん、若王子さんの作ったグラタン食べたことがあるの?」

ゆりあさんは何かを探るように遠慮がちに尋ねる。

「はい。残業していたら、差し入れだって持ってきてくれて……。何か変ですか?」

私の問いかけに対して、ゆりあさんの代わりに麻帆さんが答えてくれる。

「王子わね、確かにプロ顔負けの料理上手でジャンル問わず何でも作るけど、グラタンだけは二度と作らないって言っていたのよ」

「……え?」

どういう……こと……?

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