ランチタイムの王子様!

「なんでも昔、付き合っていたモデルの彼女に思いっきり拒絶されたんですって。“こんなにカロリーのあるものは食べられない”って。それ以来、グラタンだけはルージュランチでお目にかかることもなくなってね……。封印されたメニューになっていたのよ」

私は思わずちょっと待ってっ!!っと言いたくなった。

いきなり、私の知らない王子さん情報が沢山出てきて混乱してきたぞ……。

モデルの元彼女?封印されたメニュー?

「じゃあ、私が食べたのって……」

もしかして、グラタンに見せかけた別のメニュー?

いや、いやそんなはずはない。あれはれっきとしたグラタンだった。どこをどう見ても美味しいグラタンだ。

すっかり頭がこんがらがって疑問符が浮き出てきた私を見て、麻帆さんは弁解するように捲し立てた。

「望月さんはもちろん気にしなくていいからね!!もう何年も前の話だし、案外元彼女のことなんか忘れちゃったのかもしれないし!!王子だっていつまでも過去の恋愛を引きずるほど純情じゃないでしょう?」

「でも……」

気にするなと言われても、気になってしまう。料理好きの王子さんがメニューを封印してしまうなんて、ただ事ではない。

辛い思いをおしてまで、グラタンを作ってきてくれたのかと考えるだけで心がズキズキと痛んでしまう。

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