ランチタイムの王子様!
「お待たせしましたっ!!」
フロントにいた女性たちからの視線を追い払うように元気よく話しかける。
「それでは、行きましょうか」
王子さんはそう言うと慣れた様子で肘を差し出し、私をエスコートしようとしてくれた。
(えと……これは……)
あわわわと内心驚きながら腕に掴まると、車の助手席よりも近い位置に王子さんの横顔があってトキメいてしまう。
格式高いレストランに釣り合うように背伸びするために履いてきたいつもより高めのヒールでも、王子さんの身長は越せない。
大人の男性ということをまざまざと見せつけられる。
(王子さん、慣れてる……)
私なんて今日、初めてこのホテルに足を踏み入れるというのに、王子さんは何回も来たことがあるかのように迷いなくふかふかの絨毯の上を歩いていく。
“付き合っていたモデルの彼女に思いっきり拒絶されたんですって”
麻帆さんの声が頭の中で何度もこだまする。
(そっか……。大人だもんね……)
王子さんの周囲ににわかにちらついた女性の影に、なんとなく面白くないものを感じてしまうのは、私の修行が足りないせいなのだろうか。